『伊勢物語について』
◆-伊勢物語論のための草稿的ノート-◆
伊勢物語という作品は、一般的な見地からも、また専門的に言っても、その正確な読解は極めて難解な作品である。
私は王朝文学文化の研究者として大学で教鞭を執るが、昨今校務も多くなり、『伊勢物語』の研究に当てる時間が年々少なくなってきている。多少とも伊勢研究者としての自負を持つ私には、今、この作品を正しく理解するための作業を怠っては、やがてこの作品の古典としての命脈は尽きてしまうのではないかという切迫した気持ちさえあるのである。
私の、何としてもやらなくてはならないという気持ち、そしてそれを後押ししてくれる手段として、草稿の段階から私の思うところを公表していきたいと考え、このようなコラムを立ち上げることを思いついた。
伊勢物語は誰が書いたのかわからない作品だ。そのような作品を正しく理解するためには、まず、伊勢物語が書かれた時代を正しく知ることが重要だろう。しかし、逆に伊勢物語を読み解くことで、この時代を正しく知る手がかりともなるであろう。大げさと思われるかもしれないが、この作品を理解することは、日本や日本人のあり方、そしてまた、その文化の根本を理解することにも繋がるであろう。
コラムを読んで理解できない素朴な疑問でも一向に構わない、これから伊勢物語を勉強しようという皆さんからも遠慮なく感想を寄せて欲しいと思う。 そして、伊勢物語や王朝文学を習知されている方には、自由に感想なり、疑問なり、また反論をお寄せ頂ければ幸いである。
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