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王朝文学文化研究会 


文学文化舎


東洋大学エクステンション講座

『源氏物語』全巻を読む―「手習」巻、「夢の浮橋」巻

源氏全巻を読むシリーズ~いよいよ最終巻へ

2023年秋期―10月16日~12月11日(全8回)

毎週月(11/6除く)14:00~16:00 東洋大学白山キャンパス

締切10/6(金)

 

【概要】

浮舟はどこへ行くのか

『源氏物語』「桐壺」巻から読み始めた本シリーズも、今回が最終回です。参加された方々は、その時々バトンタッチしながらも、今回ついに最終巻「夢の浮橋」へと辿り着きました。

最終巻名「夢の浮橋」の名のとおり、不安定な「浮橋」ではあっても、「橋」とは、人を「こちら」側から「あちら」側へと渡してくれるもの。浮舟は、この「橋」を渡り、いったいどこへ行こうとするのでしょうか。この薄幸の女君は、透徹したリアリズムを追及する紫式部によって、ついに、行くべき世界を与えられたのだと思われます。

長く繰り返し語り続けられたこの物語の主題は、今ようやく、ここに結論として示される時を迎えたと言えるでしょう。私どもまた、紫式部渾身のメッセージに導かれつつ、それぞれの「夢の浮橋」を渡ることといたしましょう。

 

浮舟を救ったのは「横川の僧都」であった

言うまでもなく、『源氏物語』は十世紀当時の伝統的な「作り物語」としても創作されました。その特徴は、多々指摘することができますが、何と言っても、最高の男女両主人公を造型し、登場させることでしょう。

正編の男性主人公が「光源氏」であり、女性主人公が「紫の上」であることは言うまでもありませんが、続編(宇治十帖)の場合は、男性主人公が「薫」「匂宮」であるとして、女性主人公は「大い君」「中の君」「浮舟」という、没落の宮家の姫君たちであることは間違いありません。

そして、伝統的な物語では、男性主人公は、苦難に陥ったヒロインを救うものでなければならなかったのです。したがって、この物語の最後の女性主人公(ヒロイン)である浮舟は、むろん、その苦難は救われなければならず、その最終的な救いの物語こそ、「手習」「夢の浮橋」の両巻だったと言えるでしょう。

しかし、驚くべきことに、この物語最後のヒロイン浮舟を救う役割を担わされたのは、「薫」ではなく、「横川の僧都」であったところに、作者紫式部の深いメッセージが込められていると思われます。

このことに気付くならば、我々は、この両巻を読み解く鍵として「横川の僧都(源信)」という人物に注目しなければならないでしょう。以下、参考までに。

小年譜