源氏物語小屏風絵‐胡蝶‐

上:『源氏物語』の「胡蝶」巻で、紫の上は、秋好む中宮の「季の御読経」の催事に際して供華を行ったが、その時の使者として遣わされたのが、「迦陵頻」と「胡蝶」を舞う童子たちであった。庭の舞を見る画面奥の秋好む中宮と光源氏、春爛漫の六条院、西南の町である。

源氏物語小屏風絵-胡蝶-
(個人蔵、江戸初期)

下:「龍頭鷁首を、唐のよそひに、ことことしうしつらひて、楫取の棹さす童べ、皆みづら結ひて、唐土だたせて、さる大きなる池のなかにさし出でたれば、まことの見知らぬ国に来たらむここちして」―『源氏物語』「胡蝶」巻より

源氏物語小屏風絵‐胡蝶‐
部会報告
平成21年7月8日 第5回 水曜部会

【報告】
7月8日、第5回目の水曜部会が開催されました。参加者は14名。テキスト17頁14行目~18頁7行目「更衣の葬送」前半部分を読み進めました。

この部分の担当は私でした。亡くなった桐壺を葬る場面で、葬儀の内容に注目が集まりました。 源氏物語では葵上や紫上の死など、死を葬る場面がいくつか登場します。それを比べて考察してみることも良い切り口だと思いました。
また、母北の方が拾遺集の歌を引用しながら自ら歌を詠んだため母君の教養がうかがえる、ということから良い身分の女性は歌詠みが巧いことについて大野先生が解説して下さいました。 六条御息所は身分が高いため歌がとても巧いのに対して、源氏史上最悪に描かれている末摘花は歌詠みが下手という例も交えての解説でした。 今回の発表は私一人のみでした。
後半は大野先生が「源氏物語の魅力を説く!」ということで「源氏物語の巻名」について力説して下さいました。 源氏物語の巻名はそれぞれ対になっていて、例えば「若紫」と「末摘花」は、「紫」と「紅(末摘花の色のこと)」の対であることや、 「紅葉賀」と「花宴」は「秋」と「春」(花の季節)の対であること、そして「葵」と「賢木」はそれぞれ神事に関わりのある植物で、 内容としても左大臣家の娘の葵上の死去や、六条御息所の伊勢下りなど、高貴な身分の人間についてであることから、対になっていると言えます。 また「初音」~「夕霧」まであたりにかけては、季節が散りばめられていることにも注目することができます。 ここで挙げたこと以外にも、様々なとても興味深い巻名の秘密についてうかがうことができたので、また新たなる視点から源氏物語の魅力に触れることができました。

次回は一旦「若宮、母の喪により里邸に退出」に戻ってから、引き続き「更衣の葬送」後半部分を読み進めていく予定です。

学部三年 安田彩佳

 


※資料 (アクセスキーを入力してください)
  桐壺巻「更衣の葬送」(前半)